プロスト・グランプリ1997.2.17.

アラン・プロストと言えば、いまやフランスの百科事典にもその名が載るほどに有名な元F1レーサーである。現役時代には毎年「パリ・マッチ」誌の選ぶ「最も活躍した有名人」にその名を刻み、1993年末に引退してからもフランス国内で最も人気のあるスポーツ選手として彼の名が挙がるほどで、これは日本で言えば、イチローや前園を後目に千代の富士の名前が出てくるようなものだが、前人未到の通算51勝を挙げ、4度の世界王座についたのだから、当然といえば当然かも知れない。

2月14日、アラン・プロストによるF1チーム「リジェ」の買収と、来季からのプジョーエンジンの無償供給、ならびに「プロスト・グランプリ」へのチーム名称変更が発表された。

リジェと言えば、かつてはオーナーのギ・リジェが、友人であるミッテラン大統領の影響力で、多くの国営企業をスポンサーにつけたことで知られるF1チームである。
政権の変遷とともに、そのチームが保守中道系の政治家や実業家をバックにもつプロストに買収されたことは非常に興味深い。

ところで、プロストが長年ルノーのサポートを受けてきたことは周知の事実であり、数年前には「ルノー親善大使」という、しらじらしい肩書きで日本のコマーシャルに登場したこともある。が、ルノーがF1からの撤退を決定した後のこととはいえ、ライバルのプジョーがプロストに味方したのはなぜだろう。
一説によれば、フランスのある閣僚が渋るプジョーに決断を迫ったというのだが、それにしてもこれらはみな、彼らの「ナショナルチーム」結成に向けた並々ならぬ決意の表明だろう。日本の閣僚が急行列車を自分の地元に停めるのとは訳がちがう。

「グランプリ」発祥の地としてのプライド。世界の中心、ヨーロッパの中心という自負。左も右も選挙に勝てば「フランス万歳」の歓声を上げ、「ラ・マルセイエーズ」を合唱する国民のなせる技ということか。
自分の国を蔑んでみることが進歩的だなどと嘯く連中が跋扈するどこかの国と、何という違いだろう!