上智大学外国語学部フランス語学科同窓会による
個人情報無断開示事件

管理人の出身である上智大学外国語学部フランス語学科の同窓会組織が、当人の同意なく、管理人を含む卒業生の個人情報を第三者に無断で開示していたことが発覚しました。

本件について、去る11月18日に、代理人の弁護士から、風間烈・上智大学外国語学部フランス語学科同窓会会長に通知書(内容証明)を送付して顚末の説明と今後の方針に関する質問への回答を求めています。

平成27年11月18日

通  知  書

〒●●●-●●●●
東京都■■区■■●-●-●
中村 雅治 様 気付
上智大学外国語学部フランス語学科同窓会
会長 風間 烈 様

〒●●●-●●●●
東京都■区■■●-●-●● ■■■■■■■●階
法律事務所シュヴァリエ
水野信隆ら代理人弁護士 磯野 清華
 電話 ●●-●●●●-●●●●
 FAX ●●-●●●●-●●●●

冠省 この度,当職は,水野信隆氏,■■■■氏及び■■■■氏(以下「通知人ら」とします)の代理人として,貴団体(以下「被通知人」とします)に対し以下のとおりご連絡差し上げます。

 

被通知人が平成27年8月25日に発行した会報第26号の記事においては「同窓会では,把握している会員の情報の取り扱いには十分注意しています(中略)第三者からの情報提供依頼があった場合には,必ずご本人のメールで了承を受けた上で対応するようにしています。」との記載があります。
 ところで,上智大学外国語学部フランス語学科が平成27年10月に学内に掲出した「就職懇談会」に関わるポスター及びフェイスブック上の書込みに,通知人らを含む卒業生につき,その個人を特定できるような個人情報が通知人らに無断で掲載されました。そこで,通知人らが当該学科の教授である■■■■■氏に問い合わせたところ,■■氏からは被通知人より個人情報の提供を受けたとの説明がありました。
 被通知人が通知人らの承諾を得ないでその個人情報を■■氏に提供することは,通知人らのプライバシー権を侵害する違法な行為であるとともに,会報で自ら宣言した内容に反する行為でもあります。個人情報の保護が重要視されている昨今の社会情勢に鑑みますと,被通知人の行為は,必然的に大量の個人情報を扱うことになる同窓会の行為として甚だ疑問です。
 つきましては,通知人らは被通知人に対し,以下の質問への回答を求めます
1 被通知人はどのような理由で,■■氏に通知人らの個人情報を提供したのか。
2 前項の情報提供の決裁権者は誰か。
3 通知人から■■氏へ情報提供が行われた具体的手順はどのようなものか。
4 被通知人が会報に掲載した「会員の情報の取り扱いには十分注意しています」の「注意」の具体的内容は何か。
5 被通知人が個人情報保護方針を有しているか否か。有しているのであればその具体的内容を,有していないのであればその理由を明らかにされたい。
6 情報提供の決裁権者以外に情報提供にかかる責任者はいるか。いるとすればそのものの役職及び氏名は何か。
7 再発防止策及び今後の情報管理方針をどのようなものにするつもりか。
8 今回の被通知人の行為につき,通知人らに対しどのような謝罪を行うつもりか。

なお、上記質問とは別に、通知人らは被通知人に対し、被通知人が会員情報を当該会員の承諾なく第三者に提供したこと及び上記7記載の事項に対する回答につき、次回の会報第27号に記載することを求めます。
 本書面到達後10日以内に上記質問事項及び請求に対しご回答をいただけない場合には,法的措置を含めた手段を取らざるを得ないことお伝えいたします。
 なお,無用の混乱を避けるため,本件に関する連絡は当職までいただけますようお願い申し上げます。

草々

本来ならば、卒業生同士が仲良く協力して、出身学科を守り立てて、世代を越えた交流を深めてゆくべきところ、何ゆえ斯様なことになったのか、順を追って説明しなければならないでしょう。

去る10月12日フェイスブックの「上智大学外国語学部フランス語学科」のページに以下の書き込みがありました。

  fb1  

これを見て僕はちょっとビックリしてしまったんですが、昨年の「就職懇談会」に参加した僕を含む卒業生が特定できる情報が大書されているのです(画像にはボカしを入れています)。
氏名こそ省かれていますが、卒業年度と会社名・所属まで明記してあれば個人が特定されてしまうのは論を俟たない話。

そもそもの話、昨年の懇談会のあと、平日に仕事のやりくりをして来ていただいた講師役に対して、同窓会組織からお礼のメッセージも、学生からのフィードバックも一切ないというのは何とも面妖、というよりも、いささか無礼に過ぎるのではないかと思っていましたが、その一方で本人に事前に連絡も許諾もないままに、個人情報だけはいいように利用されてしまうことに大きな違和感を覚えずにいられません。

経済産業省ガイドラインによる「個人情報保護法における『個人情報』の定義」(※PDF注意)によると、個人情報とは「特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができるものを含む)」とあり、いくら個人名が省かれていたとしても、卒業年度、会社名、所属、役職まで書いてあれば、「他の情報と容易に照合して個人を識別できる情報」即ち「個人情報」に該当すると考えるのが自然というものでしょう、経済産業省よりも俺たちのルールのほうが偉いんだと主張するのでなければ。

この書き込みが掲載された日、僕は出張で日本にいなかったのですが、昨年僕からお願いして懇談会に出てもらった友人たちから続々とメールやメッセが飛び込んできました。
「あれは個人情報の漏洩ではないのか? 一体どうなっているのか?」
「ミズノが個人情報を公開して良いと言ったのか?」
もちろん、僕が友人たちに断りもなく個人情報の開示を許す権限などあるはずもありません。

そして、恐ろしいことにフェイスブックには、テキストだけでなく、ポスター状の画像も貼り出されていました。

  fb2  

ひょっとして、この内容が学内に掲出されて、不特定多数の人たちに個人情報が晒しあげられているのだろうか……!? しかも写真つき……!!

出張から帰国後、この案内文の連絡先として名前の書かれていた学科の教授にメールを書き(CCに学科長)、これは当人に事前同意なき個人情報の漏洩ではないかとクレームしました。
そしてその結果、以下の対応が得られました:
・ 当日中にメールで僕に謝罪の返信
・ 他当事者にも詫び状を出す方針
・ フェイスブック上の当該書き込みを直ちに削除
・ 学科事務室等に掲示していたポスターを撤去

実態として漏洩の程度は大きくないと考えられたことと、教授側から驚くほど迅速な対応と謝罪をいただいた為、僕としてもこれ以上暴れる理由もないので矛を収め、むしろ丁寧な対応をしてくださった先生に感謝する形で、対学科のお話には幕を引きました。

しかしながら、僕としても気持ちが悪かったのは情報の入手経路と、無断掲載に至ったプロセスでした。 教授の説明によると、就職懇談会は同窓会と学科の共催であることから、講師役の個人情報は学科同窓会から提供され、掲載については教授が深く考えずにゴーサインを出してしまったということのようです。

同窓会会員の個人情報を保護する意思など微塵もなく学科に渡す同窓会の感覚と、当人の事前同意を確認しようともしない教授の感覚の、何とも浮世離れしたマリアージュがもたらした人災としかいいようなく、友人たちや僕にしてみれば甚だ迷惑且つ非常識極まりないお話。

上智大学外国語学部フランス語学科同窓会の個人情報管理方針については、以前当サイトでも記事にしましたが、正確を期す為、事務局長の鍋島宣総氏から以前頂いたメール(2015年5月23日付)をそのまま引用します:
「同窓会では、把握している会員の情報(住所・電話番号・メール)の取り扱いには注意しています。全てご本人の了承を得た上でしか第三者(例えば同級生)に提供していません。名簿管理は事務局が行っており、実際に住所録にアクセスできるのは、ほんの一握りの人間です。」

更に言うと、弁護士も通知書で触れている通り、同窓会組織は今年の夏の会報でも
「同窓会では、把握している会員の情報の取り扱いには十分注意しています(中略)第三者からの情報提供依頼があった場合には,必ずご本人のメールで了承を受けた上で対応するようにしています。」
と言明しています。

  kaiho_underlined  

書き手は「事務局」とあり、実際に書いた方は不明ですが、一義的には同窓会事務局長の鍋島宣総氏か、そうでなければ同窓会会長の風間烈氏が文責を負うべきものと判断すべきでしょう(画像の傍線は引用者)。

しかしながら実際の対応は、
「注意しています」→ 全く注意せず教授に渡してます
「全てご本人の了承を得た上で」→ 誰一人得ていません

であり、会報でわざわざ宣言した事柄は虚言だったことになります。

よりにもよって、以前に個人情報管理に関する問い合わせをし、懸念を表明していた張本人の僕の情報をも事前同意なしに平気でばら撒いていたことを、同窓会組織はどう説明するつもりなのでしょうか。

同窓会事務局長・鍋島宣総氏は以前僕に対して、
「私なりに、誠実に回答させていただいたつもりです。それでも、ご理解いただけなかったようで残念です。」
というメールを寄越したことがありましたが、鍋島宣総氏のおっしゃる「誠実」とは一体何を意味するのか、是非お伺いしたいところではありますし、鍋島宣総氏が事務局長を務めるフランス語学科同窓会の行為は皆目ご理解できないですし本当に残念です。

僕のことを嫌うとかシカトするとか軽んじるというのは、同窓会側の勝手といえばその通りなのですが、これから先、何も知らない他の卒業生や現役生たちが、こういうことを平気でする人たちの行いに巻き込まれるとすれば、それは極めて剣呑という気がしてなりません。なにせ、同窓生全員の個人情報が、平気でうそをつく人たちの手中に現在もなおあって、それが今後どのように扱われるか分からないのですから。

僕が同窓会組織と関わってきた経緯からして、これまで同様に役員・関係者全員からシカトされることが予想できたため、僕から誘って参加してもらった挙句に個人情報をさらされてしまった友人らとの連名で、代理人弁護士から法的見地からの対応を促している次第です。
本件は、続報が入り次第またお伝えしたいと思います。

念の為、事実を繰り返し申し上げます:

  • 上智大学外国語学部フランス語学科同窓会会員の個人情報は、同窓会組織の一部の人間が好き勝手に第三者に提供しています。
  • 上智大学外国語学部フランス語学科同窓会組織は会報で言明したことを平気で破るウソつきです。
大袈裟でも何でもなく、僕や友人たちが思い知らされた事実です。

今後、誰の情報がいつどのように無断で開示されることになるか、あるいは現在進行形で開示されているのか、誰にも分かりませんので、同窓会会員ひとりひとりが、この点をよくよく認識する必要があります。


通知書は2015年11月18日に発出し、翌19日には送達されていることを確認しました。
ただし、これまでの経緯からして、通知書が届いても同窓会組織が総出でシカトすることは十分に予想されることでした。

しかしながら、11月26日に代理人の弁護士のところに、相手方の代理人(池田昭弁護士・池田法律事務所)からファクスが届いたそうです。
僕は現物をまだ見せてもらっていないのですが、いわく、
「事実関係を鋭意調査中なので回答期限を10日ほど猶予してほしい」 との内容。

フランス語学科同窓会の幹部には、南館英孝先生、中村雅治先生という恩師に当たる元教授たちがその名を連ねています。彼らは現役時代、
「論文(レポート)内容を鋭意精査するため、提出期限を10日間延期して欲しい」
と学生が一方的に申し出てきたら、おいそれと許すほど寛容だったでしょうか? 期限を守らない学生には単位を与えなかったような気がするのですが。
自分たちはよほど特別で偉い地位に在るとお思いなのか、自分たちの都合だけが最優先事項で他人の言い分なんぞ知ったことはないと言いたいのか何なのか、これまでフルシカトしてきた相手が弁護士を起用した途端に動き出したことといい、非常に興味深いリアクションだと思っています。

このファクスから判明したのは以下の2点と考えられます:

・ フランス語学科同窓会は通知書に反応する意思がある。
・ フランス語学科同窓会は素直に謝罪する意思はない。

前者については、これまでフランス語学科同窓会が、僕に対するオファーを半年で3回も一方的に反故にした挙句、僕からの質問を幹部全員で無視したこれまでの経緯からすれば立派な前進かも知れませんが、見方を変えれば、年下の卒業生が何を言ってもシカトしてればいいやと高を括っていた人たちが、弁護士から内容証明が来た途端に慌てふためいて動き出した、ということかも知れません。相手によって対応をガラリと変えるのも、これまた大人のご見識ということなのでしょうか。
蛇足ながら、相手方代理人の池田昭弁護士はソフィア会の代議員や常任委員を歴任されている方のようです。

そして後者は、人に謝るのに代理を立てる奴なんていないという、当たり前の想像力で結論が導かれてしまうお話ですが、ゴメンで済んだら弁護士は全員廃業を迫られるわけで、その意味で池田昭弁護士は一所懸命に文書を仕立ててこられるのかも知れません。しかしながら、自分たちに間違いがないと胸を張れるのならば、別に弁護士を起用する必要はなく、通知書の質問内容に対して堂々と回答を書けばよいですし、誤りがあると認められるのならば、その点を明らかにして謝罪すればよいだけのこと(まさに学科の教授が迅速に対応なさったように)。それをする意思がないから、弁護士に事実関係を鋭意調査してもらう必要も出てくるのでしょう。

池田昭弁護士とフランス語学科同窓会の反応が待たれます。


少し間が空いてしまいましたが、その理由は別途述べるとして、過去の経緯に触れておかねばならないと思います。

僕はもともと、同窓会の活動というものにまったく無縁で、実家に届く会報だけが唯一のつながりと言えました。
同窓会が在校生の就職支援の為の会合を催しているという話は、会報で何度か読んだことがありましたが、僕にとっては無縁のお話というか、今まで声がかかったこともなければ、いつどのように運営開催されているかも分かっていませんでした。
そんな状況に変化があったのは、SNSの発達でした。2013年のこと、フェイスブックに「上智大学フランス語学科同窓会」というページがあることを知り、同年11月に就職懇談会を開催するとの案内が掲示されていたのでした。

当時僕はイタリアに駐在していたので、この懇談会に参加することはないだろうなと思いつつ、連絡先に書かれていた同窓会役員の山岸真太郎さんという方に手伝えることがあればという趣旨のメールを書きました。ところが、会社の都合で急遽10月末に帰国することになった為、山岸真太郎さんからも是非にとお声がかかり、思いがけず出席することとなりました。

 

実際に参加してみると、現役の学生さんたちは揃って真剣で、思っている以上に就活に向けた不安が大きいであろうことが感じられました。そして、その一方で、運営や仕切りに少なからぬ違和感を覚えたのも事実でした。
というのも、毎年開催しているという割には、同窓会側は、講師役たる卒業生に対して、事前に懇談会の式次第もなければ、話して欲しい内容もロクに教えてくれないのです。あたかも、卒業生の頭数を揃えることが目的で、懇談会の中身には関心が乏しいのかと勘ぐってしまいました。事実、懇談会の進行は「講師役が各人の自己紹介をして、その後自由にグループ・ディスカッションをしてください」というもので、自由にというのは聞こえは良いのかもしれませんが、事前に講師役に関する情報がインプットされていない(同窓会役員がその場でホワイトボードに氏名と勤務先を書いていました)学生さんたちの質問は、その場でひねり出した表面的なものにならざるを得ないのではないかと僕は思ってしまいました。

「ミズノさんの働いてきた業界は、残業が多いんですよね」
「うん、でもどんな会社でも残業はあると思うけど」
こんな会話を交わしても、それが彼や彼女の進路にどれだけ役に立つというのか、僕には疑問符がたくさんついて回ってしまいました。
実際のところ、意欲のある学生さんからは、あとになってOB訪問をさせて下さいという連絡があり、僕なりに出来る限りの対応をしたつもりだし、そうした、先につながるきっかけという意味では決して懇談会の対話が無駄だったわけではないのですが。

そして、山岸真太郎さんからは
「当日は会場の図書館9階にいらしてください」
という連絡があったのですが、図書館の入館方法の案内もなく(在学中の経験から、入館時にチェックがあることを知っていましたから)、僕から問い糺すまで、誰も入り方を教えてくれませんでした。
段取りというかアレンジメントというのか、卒業して時間の経った卒業生が、招かれたその場でまごつかないようにするにはどうしたらいいのか、何を話したら現役学生とスムースに懇談が進むのか、という想像力が全然ない人たちなんだなというのが率直な感想でした。卒業生には一切報酬が出ないことは事前に告げられていたことで、完全なボランティアというのは僕も納得承知のうえで参加しましたが、だからといって、かりそめにも自分たちが招待している人間をぞんざいに扱って良いというものでもないでしょう。
懇談会後には飲み会の席を設けていただいて、学科の恩師たちともお話しすることができて、それは非常に楽しかったのですが、その後同窓会側からお礼のメールのひとつも来ません。別にお礼を言えとクレームしたいのではなく、学生からの感想やフィードバックといったフォローアップが全く無い、ボランティアで協力した結果を全く見せてもらえないのは奇妙に思えてなりませんでした。

そもそもの話、この懇談会は平日の17時開始という社会人の都合なんぞハナから考えていない時間設定で、つまるところ大学の5時限目の時間帯に当てはめているだけ。普通の会社員の定時勤務時間は9時5時なんて言い方をしますが、この懇談会に参加するには、講師役は全員会社を早退せねばならないことになります。僕も勤務を調整して、上司にお伺いを立てて、自分の有給休暇を削りました。
招待される側にそこまで負担をかけるイベントでありながら、同窓会側は、随分と杜撰なコーディネイションをするんだなと思いましたし、その一方で、学生の視点に寄り添った姿勢とも思えず、つまるところ自分たちの実績づくりのアリバイありきなのかなと感じてしまいました。
そうは言っても、外野が文句だけ言うのは簡単なことであって、実際に取り仕切る人たちには当事者にしか分からない苦労があるのだろうし、その点は慮る必要があると僕は思っていました。


2013年の就職懇談会の席上、役員の山岸真太郎さんから「来年は是非他の卒業生をお誘いください」とのコメントがありました。

確かに、色々な卒業生が来てくれた方が交流も深まるというものでしょう。幸い、僕は同期で今でも連絡を取り合う面々が少なくないですし、在学中から卒業してからも関わっていたCALLシステム(PCを用いた教材開発プロジェクト。フランス語学科の田中幸子先生が主導していた)で知り合った後輩たちとも今でも会ったり、メールのやり取りがあったりします。

とはいえ、2014年はいつ開催されるのか分かりません。
人の予定を押さえるならば、早いに越したことはないですし、僕の考えからして、どんなに遅くても6週間(1ヶ月半)くらい前には漠然とでも相手の頭に入れておかないと、後になって押しこむのは相当に難しいと思うのです。とりわけ、ピンポイントで日時が固まってしまうのであれば、相手には他の予定をズラしてもらう為の調整や根回しをするだけの猶予を十分に与えなければならないでしょうから。

そこで、10月6日に山岸真太郎さんにメールを書いて、昨年の約束を履行すべく動きたいのだけれども、今年の予定はどうなっているのでしょうか、と問い合わせてみることにしました。

すると、山岸真太郎さんからはすぐにお返事をいただきました。
いわく、今年は11月7日に開催ということだけは決まっていても、詳細は白紙で何も決まっていないとのこと。すなわち、1ヶ月前になっているというのに、講師役の募集も一切始めていなければ、懇談会の開催告知も行われていない様子でした。懇談会の内容は言うに及ばずでしょう。

同窓会組織がどのような人員構成で、どのような開催方針で臨んでいたのかは分かりませんが、1ヶ月前の段階でそれはないんじゃないか、というのが偽らざる気持ちでした。いくらなんでもやり方が雑すぎる。

日程が決まっている以上、ギリギリになって周囲を振り回せば懇談会自体は開催できるのでしょうが、それで主催者の自己満足が得られたとしても、主役たる在校生たちの役には立たないんじゃないか、という懸念が募るばかりでした。同窓会組織にとっては、懇談会は例年の繰り返しのルーティン・ワークであったとしても、学生さんたちにとって新卒での就職活動は一生に一度しかないのですから。

就職活動についてよく分からないから懇談会に来ているのに、講師役の仕事に関する事前の情報もなくその場でいきなり「自由に質問を」という2013年のスタイルは、言ってみれば、泳ぎを知らない人たちをじゃんじゃんプールに放り込んで「さあ自由に泳いでいいんですよ!」と言っているようなものではないか、と僕には思えてならないのでした。それは同窓会会報の記事に載せる記事や写真としては美しく見えたとしても、内実を伴わないのではないか、と。

僕自身、これまでに毎年何名ものOB訪問を受け入れてきて、そこで出会った学生さんの多くが就職活動に真剣に悩んでいることはよく理解していました。しかしながら、OBに会えば何とかなるだろうと思って、会うことそれ自体を目的にやってきてしまい、あやふやな会話に終始してしまったり、就職活動で本当に必要になるであろう情報を聞こうともせず帰ってしまう学生さんも少なくありませんでした。

そうした惨状を見かねて、僕はOB訪問を受けた時には、自分の仕事の話よりはむしろ、就職活動の基本的な心得や、企業研究や自己分析といったものは何を目的に、どのようにやればいいのか等々を解説することが増えていました。そして、母校の学生さんたちはそれなり以上に優秀なことは明らかなのに、どうして闇雲な就職活動に突入してしまうのか、一度でも就活を経験した身近な上級生なり卒業生が、自分の経験をどうして誰も教えてあげないのか、実に不思議でならなかったのです。
そして、前年の就職懇談会に参加していても、このモヤモヤが晴れることはなく、むしろ不安が増えるばかりでした。

そこで僕は思い切って、山岸真太郎さんに対して提案をしてみることにしました。


僕の提案というのは、就職懇談会はきわめて限られた時間ゆえ、主催者が一定のテーマ(フランス語を使っているか否か、社会人になりたての頃に気づいたこと、学生のうちにやっておけばよかったこと等)を決めて講師役に話題を前もって準備してもらうべきではないか、そして、参加する学生さんには講師役がどういう人なのか、プロファイルが分かっていればその場で急に質問を考えるのではなく、ある程度余裕を持って臨むことができるのではないか、そうしたお膳立てを念頭に懇談会の準備を進めるべきではないか、というものでした。

山岸真太郎さんは一応検討はしてくれたようですが、返ってきた返事は以下のものでした。

結論から申し上げると今年度はこれまでのまま進めようと思います。
早急な改⾰は思いとどまろうと判断しました。
同窓会活動ですので、なにかを変える場合は多くの役員の賛同を得る必要があります。
この活動は、フランス語学科という相⼿がある毎年恒例の活動です。
その年によって内容や程度の振れ幅が⼤きいことが今後ずっと継続していく上で好ましくありません。
ある年はとても良く準備ができていて、次の年はそうでなかった、ということがないほうがお互いのためだと思われます。
ところで、もしよろしければ、来年役員の改選がございますので、ぜひメンバーに加わっていただき、議論を進めてまいりませんか?
⽔野さんの情熱はメンバーに伝わると思います

<br />

逐一役員会の機関決定を得なければいけないというのは、内輪の団体にしては随分硬直化しているように思えましたし、有り体に言えば山岸真太郎さんは自分ひとりで責任を負いたくないのだろうとも思いました。それでは何の為の責任者か分かりませんけれども。
何の改善もなく毎年全く同じことをやっていさえすれば良いということであれば、そうした人たちの思考や能力の限界ということも出来るでしょうが、もちろん僕は同窓会員ではあっても役員ではありませんから、あとからやってきて大きな顔をするわけにいかないのは物の道理というもの。

僕自身も、自説持論のゴリ押しをしたいのではなく、放置すれば悪くなると分かり切っているものを見ていて黙っていられなかったまでで、後知恵で「自分にはいい案があったのに」なんて言うのはもってのほか。
「言わないで後悔するよりは、言って後悔すべし」と常日頃口にしているモットーを僕は実践したのであって、言ってみて、それでも駄目なら素直に諦めるしかありません。

そして、役員就任のオファーは予期していなかっただけに驚いたけれど、実際に内部に入ってみなければ分からないこともあるだろうし、実際に改選の時期になったら改めて決めればいいことだろうと思い、
「役員改選の件は、時期が近づきましたら別途お知らせいただければ幸いです」
と返事をしました。

山岸真太郎さんの計らいで、その後就職懇談会の実務メンバーのメールのやりとりの宛先に含んでもらえることになったのですが、ある日こんなメールが流れてきました。

今日になって学生が要望する<具体的企業名>が学科から届きました
お知り合いに該当者がいらっしゃいましたらリクルートお願いします
あと10日となりました
残りの時間、よろしくお願いします


添えられた企業名の一覧を見て、何だこの合コン人気企業ランキングみたいなのは、というのが偽らざる感想でしたが、「あと10日となりました。残りの時間、よろしくお願いします」ということは10日前の今から、こうした会社にお勤めの人を一から捜し出して、自分たちのイベントの為に、当日別の予定があってもキャンセルさせて、更に会社を早退させる交渉を始める、ということなのでしょうか。
というよりも、そもそもそうした人たちを連れて来て何をさせたいんでしょうか。前年の僕みたいに、全く実のない、噛み合わない、弾まない会話を強いたいのか、それとも、有名企業の先輩と知り合いになれたぜ!という現役学生の虚栄心を満たすが為だけに引っ張り出すということなのか。

捜査令状でも持っているのならともかく、出身学科が同じというだけで、会ったこともない人をピンポイントで呼び立てることができると本気で思っているのか、それとも「自分たちは現役学科生の要望に応えるべく仕事をしました」というアリバイづくりを演じているのか、或いは、ほかに思いもつかない背景があるのか、僕にはまったく理解不能でしたが、いずれにしても、講師役として招かれる卒業生たちは、同窓会役員たちにとっては一種の持ち駒でしかなく、持ち駒に対する配慮など望むべくもないのだな、ということを思い知らされたものでした。

持ち駒といえばもう一つ。山岸真太郎さんからは、

水野さんご紹介の○○社勤務の方、○○社の女性の方、最低限の情報として、お名前、卒年(入学年でなく)、社名、肩書きあるいはご担当、をお知らせください


とのメールが来ました。

懇談会を主催する側としては出席者をハッキリさせたいという考えは分からぬではないものの、まだ本人から正式に参加表明があったわけでもない、いわば赤の他人の個人情報をいかにもお気軽に扱おうとする、あまつさえ、当人の了承もなく教えて当然だろとでも言わんばかりの態度が伝わってきてしまい、僕は僕でカチンとくるところがありました。
こういう事態をある程度予期していたからこそ、僕からは氏名も所属も明かさなかったわけですが、一応返事はしなくてはいけませんから、

友人らに対しては直接山岸さん宛てに連絡差し上げるよう既に伝えておりますがまだ連絡がないようであればリマインダーをします。当今の時世柄、個人情報は友人の間であっても慎重に取り扱っておりますのでその点ご了解をいただければ幸いです」


やんわりお断りしました。
その後、山岸真太郎さんからは、僕宛にだけメールの返信があり、

個人情報の開示,管理に関しても,難しくなくてかつ,良い方法がないかなど,役員会にご参加いただき,いろいろお知恵を頂戴できればと,期待しております


との返答がありました。
この山岸真太郎さんのメールを素直に読めば、同窓会はこれまで個人情報管理をまともにしていないと認めているのと同じだと思うのですが。

当日、講師役は11名。僕が誘った同期(2名)と後輩(3名)それに僕自身を入れれば実に過半数の講師役を僕が揃えたことになるけれど、元々の山岸真太郎さんとの約束を十全に履行できたというだけでなく、できるだけ多くの卒業生と接する機会を学生に供するという僕の所期の目的は達成したと思えました。

5名とも、在学中から仲良くしてもらっていたり、卒業後も連絡を絶やさずにいた友人たちをしつこく誘って、まぁ水野がそこまで言うなら参加してみるかなと思ってくれた結果、いわば僕の個人的な"顔"で出席してもらえたのであって、同窓会なる組織の威光(?)を振りかざしたのではなかったし、それどころか同窓会は講師役に対して懇談会の具体的な内容、即ち何を話すのか、どういう進行なのかといったことは何の説明もしていませんでしたから、僕が昨年の事例を基に、全部説明することになりました。僕が感じたような心細さや不快感を、自分が誘った人たちにまで共有してほしくはありませんでしたから。

細かな話ではあったけれど、図書館に入る時には受付の方に「自分はフランス語学科の卒業生で、就職懇談会に参加する為に来た」旨を伝えるように、友人たちには念の為連絡をしておきました。
果たして、誰も同窓会側から事前の案内などは聞かされておらず、口々に
「ミズノが教えてくれなかったら入り方が分からなかった」
と感謝されはしたものの、前年に僕が質問して指摘した事柄は、同窓会役員にとっては反省点には成り得なかったのだろうな、自分たちが毎年やっていることに間違いがないと思っているから、毎年同じことをして、自ら招待した人間に毎年同じ不便を強いるのだろうな、という暗澹たる気持ちにさせられたものでした。

他方、くだんの「合コン人気企業」(?)のリクルートの成果を見ることはできませんでした。
それはそうでしょう、仮にそうした会社で働く卒業生が見つかったとしても、会社を欠勤または早退までして自分たちの企画に乗ることにどのようなバリューが見込めるのか、同窓会側が具体的な提示をしている形跡がないのですから。

そして懇談会。

冒頭、自己紹介と学生さんへのメッセージをと言われたので、僕は以下のような話をしました。
「社会に出る、ビジネスパーソンになる、あるいは研究者として仕事をするとしても、必ず必要になる資質というものがあると思います。それを一つだけ選べと言われたら僕は、『人を心配させない、その心がけができること』だと思っています。今日皆さんがこの懇談会に来ているのも、恐らくは、就職活動という未知なるものに挑む不安を少しでも取り除きたい気持ちがあったからだと思います。こういう気持ちは、これから会社で接するお客さんであったり、一緒に働く上司や同僚も同じように抱いています。アイツちゃんと仕事してんのかな、言ったことやってくれてんのかな、どこまで進んでるのかな、といった小さな不安の気持ちにキチンと対応出来る人というのが、社会人としての資質がある人ということになるんじゃないかと僕は思っています。この時期に聞いた就職セミナーの話なんて、8割から9割は忘れてしまいます。でも、この『不安にさせない』という心がけだけは、これから先の人生にもずっとつきまとうお話ですから、ぜひとも忘れないで頂きたいと思います。」

このコメントは、学生に向けたものではあったけれども、自分で招いている講師役に何のケアーもしない、毎年それが当たり前だと思っている同窓会へのメッセージでもありました。もっとも、それは全く伝わってはいなかったようで、懇談会からひと月あまり経ったあと、僕が誘って参加してくれた友達のひとりに
「あの後、同窓会から何か連絡あった?お礼とかコメントとか」
と訊いてみたら、口を揃えて
「いいえ、まったく」
との返答でした。

懇談会のあとの飲み会はご馳走になっているのだから、同窓会としてはそれで礼を尽くしたといいたいのかも知れませんが、僕が誘った友人の中には、勤務時間をやりくりして四ツ谷まで罷り出て、懇談会が終わるや会社に戻って仕事の帳尻を合わせてくれた人、即ち飲み会に出席していない人もいたのでした。

飲み会に話を矮小化させるまでもなく、ボランティアで自分の時間を割いてくれた人たちに、主催者が何か言うことはないのでしょうか。
社会人を目指す学生との懇談会で、社会人らしい人間の振る舞いを、主催者に期待してはいけないものでしょうか。

別の友達からは、
「あの懇談会は学生が仕切っているのかと思っていたら、自分より相当年上の卒業生たちだったので驚いた。学生なら、多少ならず雑なやり方だったとしても仕方ないと思えるけれど、いい歳した社会人が、しかも毎年やっていて、あれはないと思った。」
という、正鵠を射た意見も聞かされたのですが、呼ぶだけ呼んであとは放置する同窓会組織の人たちを相手に、僕としてもどうすることも出来ません。
せめて、来年度僕が同窓会の役員になるのならば、その時にはこうした非常識かつ傲慢きわまる対応は改めようと思っていました。

(つづく)